脱ぎ散らかし日記

29さいになっちゃった。

全てがここにある、はず。

彼氏と別れたい。

 

……と大声で言いたいのに言えないのは、まだ本心じゃないということだろうか。
思い出というのはとても優しいもので、心のザワザワを落ち着かせるトランキライザーのようだと思う。それを失うとなると、途端に不安が押し寄せ、もう比喩でもなんでもなく足元がぐらつく。
先日彼氏から「友達に戻りたい」と言われたとき、必死になって抵抗したのはきっとそのトランキライザーをいきなり取り上げられそうになったからだ。
そのやり取りが収束し何事も無かったかのように落ち着いた。しかしこのまま一緒にいてもどうにもなれない、どこにもいけないと分かった今、ううん、そう諦めかけている今(努力でどうにかならないものではないのだ。あくまでそう認識してしまっているのが私の中では大問題。)、どうするのが一番いいのだろう。
今まで興味がないと思っていたけど、自分が思っていたより結婚したかったし、何より自分の家族が欲しいと思っていたらしい。しかし、彼はそれを望んでいない。少なくとも今は。

なーんて、よくある話。よくある話なのに、よくある話だなーって笑い飛ばせない。

とびきりのおしゃれして別れ話を

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冗談でもなんでもなく、彼を世界一好きで、世界一幸せにできるのは自分だと思っていた。本当に恥ずかしながら、このまま2人で生きていくのだろうなと疑いもしなかった。
今は、わからない。このままずっと一緒にいる想像もできない。別れる想像は、最近ようやくできるようになってきた。

私はきっとこの先も今住んでいる地域周辺で暮らすだろう。少なくとも親族や友達がいる間は、そうしたいなとも思っている。
300キロ以上離れている彼との生活をあとどれくらい続けるのか?その先は?目の前が真っ暗だ。
彼も私もまだまだ1人でやりたいこともある。仕事がしんどいからこそ、まだ彼に愚痴を吐くだけの自分にもなりたくない。

全部欲しいし、全部いらないのだ、結局、私は。

彼と別れれば、彼と過ごした日々や思い出や訪れた場所、すべて思い出すのが躊躇われるものになるだろう。優しいこの何年間を失うのはあまりに辛い。だから、彼の手を離さない。離せない。
でもその時点でもう私は彼を見ていない。彼の向こうにある自分のトランキライザーの行方の心配をしているだけだ。

数少ないであろう友人に言われた。「今は彼しかいないかもしれないと思うけど、そんなことはないから。いつかそんなこともあったなーって笑えるからね。」分かっている。分かっているのだ。
思い悩んで、とっちらかったまんま悶えていたらはたと気づいた。

今はまだ彼にさよならと言えない。だけど、もしこのまま彼との人生が交わらないものとなっても、彼と過ごしてきたものを辛いだけの記憶じゃなくすればいい。そこにあるのはすべて私のものだ。そこで得たり失ったものはすべて、私の今を作っている。
なんと幸せなことだろう。私の全てがそこにあり、私と生きていってくれる。意味のないことなんてないじゃないか。多分。うん、それでいいじゃん。

 

こうあるべきだ、こうしなければ。
正しいと思うことを進めていくだけがヤリカタじゃないのかなーと。彼と付き合ってからなんとなく思うのです。
好きだから一緒にいたい。という気持ちが、正しくないから離れました、より、私に優しくないはずがないもん。問題の先延ばしでも。私たちは今コウアルベキダに当てはまらないけど、コウアリタイに当てはまるから良し。良しにする。
次もちゃんと前を向くために、この恋を全うさせてあげたいと思います。彼を失ってもその全てを忘れてしまうわけではない。
私は空っぽじゃないのだから。

 

と、彼が隣で眠るベッドの中でいろいろ考えて、彼の手を離すのは今じゃなくてもいいなという結論に達し、このモヤモヤはまた心の底に沈むのであった。ちゃんちゃん。

 

ひぐちアサ先生のヤサシイワタシのヤエさんの「あー気分が上向いたわー」という言葉を思い出し、そう、それだなあと思う。彼女はすぐその後に死んでしまうけれど、その時ヒロタカに救われたと思ったのはきっと嘘じゃないんだろうなあ。